ゴアテックスなど撥水透湿性ウェアの注意点

ゴアテックスはこんなにも素晴らしい

ゴアテックスが登場して以来、私たちの登山活動はとても快適なものになりました。
それまでは傘が水を通さないようにコーティングを行うことで内部の衣類を濡らすことをふせいでいたものの、コーティングされたレインジャケットは内部が蒸れてとても不快でした。
それがゴアテックスが登場したことで登山業界は大きく変わり、今日の登山の発展につながったことは間違いないと思います。

ただ、そんなゴアテックスのような透湿性素材、素晴らしいメリットもある一方で、デメリットも生じます。

これらはゴアテックスなどの防水透湿性生地の構造を理解することで、デメリットについて理解しやすくなるため、構造を含めて説明していきます。

 

ゴアテックスは生地ではない?

ゴアテックス等の防水透湿性生地の構造を知ることは、今後の話のコアになりますので先に説明します。

若干誤解を与えてしまう可能性がある表現にはなりますが、ゴアテックスの本体は私たちの目に見えるものではありません。
生地によって隠れている内部にこそゴアテックスの本体があります。

ゴアテックスの本体は膜です。フィルムとも近いものです。
そしてこの膜こそがゴアテックスなどの防水透湿性の本体です。その膜を保護するように上下に生地で挟み込んだものを私たちは目にしています。

 

ゴアテックスのデメリットの正体

ゴアテックスなど防水透湿性生地に使われている構造こそ非常に重要で、これこそがゴアテックスの致命的なデメリットを生む正体とも言えます。

例えばもしゴアテックスのメンブレンだけでレインジャケットを作れたとしたら、メンテナンスが要らなくなります。
ゴアテックスのメンブレンは汚れ自体が付きにくく、定着しにくいので、簡単にジャケットを水で流すだけで良好な状態を保つことはできるでしょう。
しかもメンブレンは化学的に安定なので、ずっと天日干しをしていても劣化の恐れはありません。
それだけでなく、湿気が多かろうが、カビも生えにくく、気にする必要はありません。
それほどゴアテックスのメンブレン自体は安定的に高い性能を保ってくれます。

 

ゴアテックスメンブレンだけでレインウェアを作ったら?

ただし、ゴアテックスメンブレンだけでレインウェアを作るのはその他の面でデメリットを生み出し、よい製品にはなりません。

例えばゴアテックスがむき出しの状態では使用時の摩耗や擦れなど物理的なダメージに対して十分な強度が得られず、一回山で使用しただけで破れてしまう可能性があります。

しかし、例えば重量を無視して厚みをとにかく上げて簡単に破れないように対応したとしましょう。
しかしながら、ゴアテックスがむき出しだと、着心地も悪く、肌に張り付く感触が心地よくないでしょう。

これだけでなく、幾つかのデメリットが存在します。
だからゴアテックスのメンブレンだけでレインジャケットを作ることされていません(コーティングなどで先のデメリットを軽減することは行ったりしています)。
必ず生地に挟み込んで使用しています。

 

繊維に挟まれるからこそ、上下の生地の影響を受けてしまう

ゴアテックスメンブレンは先で説明したように膜であって、生地本体とはちょっと違います。
上下を生地で挟み込んだ物を生地とも言えなくはないのですが、本質は内部のメンブレンです。

上下を生地で挟んであるということは、つまり、ゴアテックスメンブレンそのものに変質や劣化がないとしても、上下の生地が変化すればその影響を受けてしまうということでもあります。

これこそがゴアテックスがメンテナンスを必要とする最大の要因です。

メンブレンの上下を透湿性の無いもので覆ってしまえば、いくらゴアテックスメンブレン本体に透湿性があろうが、その性能は阻害されてしまいます。

上下の生地は透湿性を阻害しないことが条件なのです。

透湿性を妨げる要因と対策

透湿性を妨げる要因は幾つかありますが、主な要因は内部側生地の汚れと、外側生地の撥水性の低下です。
どちらも繊維の目を詰まらせ、湿気の通り道を塞いでしまいます。

デメリットはこれだけにとどまりません。
外側生地の撥水性が失われると、外側生地は水を吸収するようになってしまいます。
内側にゴアテックスのメンブレンがあるので水は通過しないものの、外側生地は水を貯めこんでしまいます。

これによりレインウェア自体が重くなってしまいします。
そして水は温度を伝えやすいため体を冷えやすくしてしまいます。

思い切り雨でぬれてしまったTシャツを着ていることを想像してください。
水は通さないので体は濡れないのですが、状況としては似たような状況になってしまいます。
じつはビニール素材の使い捨てレインジャケットは水を吸収しないので、水を吸収してしまったゴアテックスレインウェアはこれらより悪いと言えます。
なぜなら透湿性が無いのはどちらも同じだからです。

では私たちはどのように対策すればよいだろうか。

その答えは定期的にメンテナンスをすることです。
定期的にクリーニングをして汚れを取り、定期的に撥水回復作業を行うことです。

基本的にはクリーニングは激しく使ったたびに行ってほしいと考えています。
そして撥水回復作業は使用状況によるがシーズン毎に行うことをおすすめします。

私たちは本当に山で使うための撥水加工を研究してきた。

私たちは元々富士山の登山用にレインジャケットを貸し出してきました。
そして私たちも最初は防水スプレーやニクワックスなどを使ってゴアテックスのレインジャケットをメンテナンスしてきました。
でもいくらメーカーの記載の通りメンテナンスをしても満足のいく撥水には戻らなかったのです。

私たちはたくさんのゴアテックスを使って実験をしてきました。
実に100着以上のゴアテックスジャケットをダメにしてしまいました。
幸い私たちはレンタルサービスを提供していたために、撥水性を失ったゴアテックスジャケットをたくさん保有していました。
そのおかげで、私たちは防水スプレーやニクワックスの致命的な点を発見できたのです。
簡単に言えば、もともと処理されている撥水加工とそれらは異なるということです。
違う物なので、それらを用いても元の撥水状態に戻ることは無いということです。

そしてどうすれば元のような撥水状態に戻せるのか研究してきました。
これらは簡単ではありませんでしたが長い年月をかけて開発してきました。
そうして完成したのが私たちの弾水コーティング技術です。

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