日本におけるPFAS問題とは

先日NHKでPFAS問題が取り上げられていました。さすがNHKだけあって、どれも間違った内容にはなっていなかったです。ただ、一般の人が見てその絶妙な言い回しやエクスキューズしている部分などは理解してもらえるのか心配になりました。日本はPFAS問題に対して先進的ではないのですが、今回は日本におけるPFAS問題を取り上げることで、PFAS問題のさらなる議論のきっかけになればと考えています。

そもそもPFASとは

PFASとは有機フッ素化合物の総称として語られています。簡単に言うとフッ素と炭素の結び付きがある化合物ということです。

正確にはパーフルオルアルキル化合物なのでアルキル基の水素がフッ素に置き換わった、炭素とフッ素結合と言うことですが、今では炭素とフッ素の結合がある化合物として認識されています。こまかな定義は使う組織や学会によって異なるので、その種類は何千とも何万とも言われます。つまり統一した定義ができないということでもありますので、細かい部分は気にせず、先に言った炭素とフッ素の結びつきがある化合物という理解で良いです。

PFASの特徴は?

PFASの特徴は、難分解性です。炭素とフッ素の結合は、最も強い化学結合とも言えます。そのため環境中で自然分解するには非常に困難であり、どの環境かによりますが、状況によっては何百年、何千年と掛かる場合があります。

フッ素は自然界にも存在しますが、炭素とフッ素の結合をもつPFASは自然界に存在しません。その人工的な化合物が、長い年月地球環境に留まるということが問題視されています。

さらに、水に溶けやすい性質より、飲み水や動物、魚介類、そして農作物にも取り込まれてしまい、飲み水や食べ物から私たちも知らずに摂取してしまうという問題もあります。PFASは大気環境化にも含まれますが、それ以上に問題を深刻化しているのが水を通じた摂取となっています。

PFASの問題点は?

PFASの問題点を挙げることには少し難しさを含みます。

間違いなく言えるのは環境問題です。これについてはどんな学者でも異論はないでしょう。ただし議論を呼んでしまうのが人体への影響です。人体の影響があることは分かっているのですが、それがどの程度なのかと言う点で議論が避けられません。日本でも人体への影響があることが断定的に報道されていたりもしますが、実際は可能性はある、けど良くわからない部分も多いのです。そしてこれらはPFOAやPFOSといった以前よく使用していたPFASの一部の話を言っているのであり、PFASの全部が分かっているわけではありません。

ただし、よく分からないから使ってよいというわけではなく、有害の可能性があるものは仕様や製造を止めようということで、日本だけでなく、幾つかの国ではすでに一部のPFASは規制対象となっています。さらに、日本以外の一部の国では、全てのPFASを規制対象にしようという取り組みも始まっています。

日本におけるPFAS問題とは?

PFASといっても、日本でのPFAS問題は、ほぼPFOAとPFOSの二つに限られています。規制としてはPFOSが2010年、PFOAが2021年、そしてPFHxSが2022年に規制となりました。それ以外もゼロではないのですが、現時点ではPFOAかPFOSの問題が大きいため、それ以外はあまり目を向けられることは少ないです。

PFOA、PFOSと言っても、本来は両者を一色単に語ることも困難です。それぞれ別物であり、特性が異なるからです。もちろん人体への影響なども異なります。もっと言えば製造方法すら異なっているので、混在して製造されるということはありません。そのため日本の場合、PFOA、PFOSのどちらが検出されるのかによって、発生源の重要な情報となります。例えば日本での大手フッ素製造化学メーカーであるダイキン工業、AGC共にPFOSの製造実績は無く、PFOAは2015年までに製造を取りやめています。そうした状況を踏まえながらPFOA、PFOSのどちらが顕著に検出されるかによって発生源の推定を行っています。

日本でのPFASの発生源はどうなっているのか?

前述したように日本では問題化されているのはPFASといっても、その中でPFOSかPFOAが注目されています。日本の大手フッ素化学製造メーカーであるダイキン工業、AGCはPFOSでの製造実績がないため、PFOSが検出されるとすると基本的には輸入品から発生しているものと考えられます。一方でPFOAは日本で製造された(製造時に含有される)実績があるため、製造工場周辺などで検出されています。

以上の傾向は良く現れており、泡消火剤でPFOSが界面活性剤として使われるため、米軍基地や空港近くの河川や土壌などではPFOSが高く検出されています。また、かつてPFOAを製造されていた工場付近の河川や土壌などではPFOAが高く検出されるという傾向になっています。

一方で二次被害も見逃せないです。これらPFOAを除去するためには活性炭を用いることが多いのですが、そのPFOAを除去するために用いた活性炭を野ざらし状態で残置していた結果、雨などで流れ出し、残置箇所付近の河川から高い濃度でPFOAが検出されるという事態になっています。

日本におけるメディア報道

日本におけるPFASのメディア報道をみると、PFASの人的被害を象徴的に報道して、危険な物質と言うことを印象付けようとする報道になっています。そして、政府は科学的根拠が不十分だということを理由に積極的なPFAS対策がされていないことを海外の事例、特に米国基準と比較して報道するというのがここ最近の流れになっています。

そして、PFOAとPFOSの2種類しか目を向けていない点も特徴的です。PFOAとPFOSの含有量基準が米国基準に対して高い、規制が甘いという議論になっています。

気になる点は環境問題として取りあげられることはほとんど見られない点です。人工物であるPFASが排出され、長く環境中にとどまってしまうという点でそれこそが問題だという報道はされてはいません。

PFAS規制

日本におけるPFAS規制は世界に対して後れを取る形にはなっています。疑わしいものを規制するという考えは日本ではあまり馴染みがないため、科学的根拠が確認された物を規制していくというのが基本的な日本のスタンスだからです。日本での規制も現状はPFOS、PFOA、PFHxSの3種のみとなっています。

世界的に見ても、全てのPFASを規制するという法案が制定されるという一方で、それが制定された地域であっても一部の特別な用途の使用は認めるという形になっており、完全排除という流れには至っておりません。
どうしても必要な物以外の代替可能な分野から取り組んでいくというのは、私たちに課せられた責任かもしれません。
今後の日本がPFAS規制をどのように実施していくか注目です。

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