ゴアテックスとレインウェアはそもそも同じものを示しているのですが、ゴアテックスは防水素材であって、正確に言えばゴアテックス素材を使ったレインジャケットとなります。
ここではゴアテックス素材の理解やレインジャケットの構造の理解ができるように解説していきます。特にvol.1ではレインジャケットの基礎知識をお伝えしていきます。
ゴアテックスは素材であってレインジャケットではない
ゴアテックスのレインジャケットと良く言いますが、ゴアテックスはレインジャケットを作っているメーカーではありません。ゴアテックスは素材です。生地と言っても間違いではありませんが、正確に言えば生地の一部の素材です。ゴアテックスは薄いフィルムのような物であり、膜とも呼ばれます。この膜は水を通さない性能を持っているので、ゴアテックスを使った生地は防水性能を持ちます。この防水性能を持った生地を使うことで、厳しい雨でも耐えられるレインジャケットが作れます。
ゴアテックスは素材の為、決してレインジャケットだけに使われる素材ではありません。コートやダウンジャケットはもちろん、バッグもありますし、シューズもありますし、以前はテントもゴアテックス素材を使ったものがありました。そのため、ゴアテックス=レインジャケットとなるわけではありません。
防水性能だけでなく他にもメリットが
防水性能だけであれば、ゴアテックスに限らず他にも幾つか方法はあるので、ゴアテックスを使わなくても良いのですが、ゴアテックスにはほかの防水素材にはない性質があるのです。
最も特徴的な性質が透湿性能です。
基本的には防水生地というのは膜やコーティングで作られるので、膜やコーティングで生地目、つまり隙間を塞ぐ仕様になっており、防水性を保っています。
生地目を塞いでしまうので、同時に通気性や湿気を通す性能(透湿性能と言う)も失われてしまいます。
そのため、レインジャケットを着るとレインジャケットの内部が湿気で蒸れてしまい不快になります。
しかしながら生地目を塞がなければ防水性は保てないため、レインジャケットを着ると衣類内部が蒸れることは仕方ないものだと従来から考えられていました
なんと、これを解消したのがゴアテックス素材なのです。
ゴアテックスは防水生地なのに透湿性を併せ持つ
ゴアテックスは膜であるので、水は通さずに防水性能を持ちます。
ただしこの膜は見た目は前述したように薄いフィルムです、しかしこれを拡大してみてみると繊維のようなものが細かく絡み合ってできています。
膜でありながらもわずかに隙間が空いているのです。
その隙間の大きさは1平方センチメートルに14億個の微細な隙間となっています。
この隙間のお陰で、水も湿気も何も通さないわけではなく、水は通さないが水蒸気はつうかすることができます。
このお陰で通気性はないのですが、湿気は通してくれます。
これを私たちは透湿性と呼んでいます。
そして防水性を持っていながら透湿性を確保できるという、相反するような性質を併せ持つことができました。
この防水透湿性素材が使われているかどうかが高価なレインジャケットか安価なレインジャケットかの違いとなっています。
ここまでを整理するとゴアテックス=防水透湿性素材となります。
防水透湿性素材はゴアテックスだけはない
この素晴らしい性質を持つ防水透湿性素材ですが、実はゴアテックスだけが持つ性能ではありません。
他にも同じ性質を持つ素材が存在します。
例えばSYMPATEXと呼ばれる素材も同じく防水透湿性素材であり、Dermizaxは東レが開発した同じく防水透湿性素材です。
これだけではなくさらにもっと存在します。
専門的に言えばゴアテックスはePTFEと呼ばれるフッ素樹脂を原料とした素材(2024頃よりフッ素樹脂を使わないePEに変更されてきている)であり、その他ポリウレタンを原料とした多孔質PUや無孔質PUと分類される素材が存在します。
これらも防水性と透湿性を併せ持つ防水透湿性素材です。
防水性の確保と言えばコーティングであった
防水性の確保と言えば、従来はコーティングでした。
なぜなら傘の防水が基本的には内側に防水性を保つコーティングがされているからです。
今でもコーティングによるレインジャケットは販売されています。
コーティングでも透湿性を持つコーティングと透湿性をもたないコーティングがあり、子供のころ使っていたレインウェアが蒸れて大変だったという思い出がある人は、この透湿性のないコーティングがされたレインジャケットだったかもしれません。
安価に作れる点がポイントです。
ただし、コーティングは直に湿気や皮膚の油、擦れ等のストレスにさらされるため劣化しやすいという特徴もあります。
前述の膜を生地に挟み込むことで防水性を確保する方法をメンブレン法、防水樹脂をコーティングすることによって防水性を保つ方法をコーティング法として分類されることがあります。
透湿性素材ではメンテナンスが重要になる
ここでひとつ重要な点がある。メンブレン法のレインウェアもコーティング法のレインジャケットであっても、透湿性素材が使われている場合は、全て共通してメンテナンスが重要になります。
なぜならば、汚れが透湿性を阻害してしまうからです。
どんなにカタログスペックで高い透湿性能が謡われていたとしてもそれは初期の性能であって、実仕様はかならずそれより低くなります。
そして低くなる要因は、もちろん使用環境がそもそも試験のスペックとは異なっているという点もありますが、それ以外に重要な点は、汚れ等によって透湿するための空間が塞がれてしまうことです。
私たちは透湿性のある高価なレインジャケットの場合、定期的なメンテナンスをして生地をきれいに保つ必要があります。
もちろん撥水性能も重要です。
生地に水が染み込んでしまっている状態では、透湿性は著しく低いことは容易に想像できます。
高機能レインジャケットはその維持も大変なのを理解しておいてください。