【ゴアテックスのクリーニング】個人で行う洗濯とプロのクリーニングとの違い

GORE-TEX(ゴアテックス)は、過酷な条件下でも身体をドライに保つ画期的な防水素材です。しかし、その優れた性能を長持ちさせ、維持するためには、適切なクリーニングやメンテナンスが不可欠です。この記事では、ゴアテックスのクリーニング方法について紹介するとともに、個人とプロによるクリーニングでは何が違うのかを紐解いていきたいと思います。

個人とプロのクリーニングの違いは、一言で言うと品質です。
特に下記が異なります。

  • 汚れ落ち
  • 撥水回復性
  • チェックおよび修繕
    その他に、新品の時のように張りが戻った、色つやが美しくなった、取れなかった臭いが取れたなどの感想も頂きます。細かい内容は本文で解説していきます。

そもそもゴアテックスのクリーニングは、各メーカーが伝えているように、プロにしかできないわけではなく、ご家庭にある洗濯機を使って自分でも選択することができます。

ゴアテックスを適切にクリーニングすることで防水性能を低下させる汚れ、油分、その他の汚れを取り除き、通気性を確保することでゴアテックスが持つ高性能な面を発揮させることができます。
一方で自分でクリーニングすることで失敗が怖いという方もいまして、よくある失敗事例も紹介していきます。

ゴアテックスウェアやギアを正しい知識を持ってクリーニングし、メンテナンスすることで、良い状態を保ちながら永く大切に使っていきたいですね。

そもそもゴアテックスとは?

GORE-TEXは、数十年にわたってアウトドア愛好家や冒険家にとって頼りにされてきた防水素材です。
この素材は、水分を外に通さず、同時に内部からの湿気を外に逃がすことができる特長があります。
このため、雨や雪の中で快適に過ごすことができるだけでなく、激しい運動や厳しい気象条件にも耐えることができます。

GORE-TEXは、微細なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の膜を含んだ複合素材で構成されています。
この膜は、水分子を通しにくくする一方で、蒸気分子は通すことができます。
この仕組みにより、雨などの水分は防ぎながら、内部の湿気は逃がすことができるのです。

もう少し詳しく言うと…

ゴアテックスというのは、ざっくり言うと防水性のある生地だと考えてもらって大丈夫です。
正確に言うとゴアテックスメンブレンと呼ばれるフィルム状の素材をナイロン生地等でラミネート加工して防水生地が出来上がっています。

ゴアテックスのメンブレンは微細なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の膜を含んだ複合素材で構成されており、網目状の中に存在する孔の大きさは水滴の2万分の1、水蒸気分子の700分の1です。
この大きさの違いにより、水蒸気はメンブレンを通過し、一方で水は通過できないというユニークな性質を持っています。

このユニークな性質により、防水生地を使った衣類を着ると、これまでは内部に湿気がこもってしまい不快だったのですが、ゴアテックス生地を使っていると適度に衣類内部の湿気を逃がしてくれて、快適性を保ってくれます。

実はゴアテックスだけがこのような水は通さないけど湿気は逃がしてくれるという素材というわけではなく、他にも同じ機能を持つ素材があります。

でもなぜゴアテックスが高品質レインウェアの代名詞のようになって、様々な有名メーカーに採用されているかと言うと、その防水性能に対しての透湿性が優れており、そして劣化等が起こりにくいという高い品質が確保されているからです。

性能を維持するにはクリーニングやメンテナンスが必要

ゴアテックスはメンブレンと呼ばれる膜が、生地にラミネートされていると前述しました。

では、なぜわざわざゴアテックスを生地でラミネートしているかと言うと、メンブレン自体を保護する役割があったり、メンブレンが直接肌に触れると不快に感じる場合があるのでそれを防ぐためでもあります。

このゴアテックスメンブレンを生地でラミネートしている点がポイントです。
ラミネートしているということは、つまり、ラミネートしている生地の影響を受けるということです。
生地をラミネートするだけでもラミネートされていないゴアテックスメンブレンそのものよりも透湿性は僅かに落ちます。
それだけでなく、具体的には下記のようなデメリットも生じます。

汚れによる透湿性の低下

ラミネートするだけでも透湿性は僅かに落ちると言いましたが、クリーニングしない状態では生地の汚れも透湿性の低下につながります。
そしてそれは、決してウェアの外側の汚れだけに寄るものではありません。
ウェアの内部、皮脂汚れが溜まることも透湿性の阻害に繋がります。

撥水性能低下による透湿性の低下

ラミネートされた生地が撥水性を失い、水を含んだ状態になってしまうとゴアテックスメンブレンで透湿を行おうとしてもその上の生地で穴がふさがれてしまう状態になり透湿性が低下してしまいます。
生地の撥水性を維持しないとゴアテックスの性能は活かされません。

このほかに撥水性の低下は、生地に水を含んでしまうので、重さの増加と熱を伝えやすくしてしまうことによる冷えの加速に繋がってしまいます。
つまりゴアテックス生地を使ったウェアでは、ゴアテックスにラミネートされている生地の状態にも気を配る必要があります。

この様に、ゴアテックスの性能と言うのは実は上下にラミネートされる生地に依存されるという性質を持ちます。

GORE-TEXのクリーニングのステップバイステップガイド

ここではゴアテックスウェアを個人でクリーニングするためのステップバイステップの手順を以下に示します。

ステップ1: クリーニング前の準備

まず、ゴアテックスウェアのポケットに中身が無いことを確認しましょう。そして、洗濯の際に不必要にポケットに水が溜まり洗濯機に負荷が掛かりすぎないように全てのポケットのファスナーは閉めます。

そして、ウェアをネットに入れましょう。ネットに入れることで部品の当たりや破損を防ぐことができます。ネットが無い場合はウェアを裏返すことでも同じ効果があります。

ステップ2: 洗濯

ゴアテックスウェアを洗濯機で洗う際には、アウトドアメーカーから発売されている専用の洗剤を使用しましょう。一般洗剤で洗えないことはありません。そして一回の洗濯でその違いが出るわけではありません。ただし何回か洗濯を繰り返すと、洗剤残りの問題や、撥水性を回復させる際の処理に影響が出てきてしまう場合もあります。その点、アウトドアメーカーの洗剤は混ぜ物が少なく、すすぎ性も良いのでゴアテックスの洗濯に適しています。

洗剤の量は基本的に少なめを意識します。洗剤のパッケージには、使用する水の量に対しての洗剤量が記載されていると思うので、洗剤過多とならないように注意して計算しましょう。

最初の洗浄サイクルでは10分~15分、その後すすぎを3回行い、洗剤残りをできる限り除去します。洗剤残りは撥水性に影響を及ぼす場合があります。

最後に脱水は1分、もしくは最小時間にしてください。ゴアテックスウェアは防水生地のため水が抜けないため、洗濯機に大きな負荷が掛かります。大まかな水を排水するという程度にとどめるため、最小時間の脱水としてください。

ステップ3: 乾燥

上記で洗濯されたゴアテックスウェアは脱水が不十分ですのでまだびしょびしょに濡れている状態です。

水が滴り落ちると思いますので、それを受けるバケツなどを用意して、日陰干しを行っていきます。直射日光で干しても短時間であれば問題ありませんが、長時間の日光干しはウェアに影響を与えてしまいます。

ウェアが乾いたら、さらに乾燥機に20分ほど入れて、撥水性能の回復を行います。ウェアが乾いてから乾燥機に入れるのがポイントになります。

ステップ 4: 再撥水処理

ステップ3で紹介した乾燥機に入れる処理を実施しても撥水性が回復しない場合があります。それは撥水性分そのものが剥がれてしまっている場合です。その場合は再度撥水処理を行う必要があります。

撥水性の再処理としては、防水スプレーやアウトドア専門店で販売されている洗濯機に入れる撥水剤を使うことができます。

防水スプレーは最も手軽に処理できますが、吸い込むと危険ですので、必ず野外でスプレーを行うようにしましょう。

洗濯機に入れる撥水剤の場合、量を多く入れすぎないようにしましょう。たくさん入れると効果が高くなると思って、後に紹介するような失敗が起こることが多いです。

ゴアテックスをクリーニングする際の代表的な失敗

プリントロゴの剥がれ

ゴアテックスウェアのロゴが刺繍の場合は気にしなくて良いのですが、プリントロゴの場合は、剥がれが生じる可能性があります。ロゴは接着されているので、経年劣化によってどうしてもはがれやすくなりますが、それを防ぐためにも、洗濯ネットに入れるか裏返しをして洗うようにしましょう。

汚れ、シミが取れない

ゴアテックス専用洗剤は洗浄力を高めているわけではないため、汚れ落ちはどうしても悪くなります。気になる部分は最初に洗剤を染み込ませておくなどの下処理を行うことでシミ汚れも落ちやすくなります。

撥水性が落ちてしまった

撥水が落ちてしまう場合、洗剤の選定のミスやすすぎ不足が考えられます。長時間水に浸かることでも撥水性の低下につながります。まずはしっかりとウェアが乾燥した後に乾燥機に20分掛けることを実施してみましょう。それでも撥水性が悪い場合は撥水回復処理を行う必要があります。

撥水性が回復できない

撥水回復処理を行ってみたものの、期待した回復ができないこともあります。そもそも個人で行う撥水回復処理は、衣類製造時の撥水加工と同じ工程ではないため、同じ品質にはできないことは理解しましょう。

それを加味しても、不十分な撥水に終わってしまう場合もあります。撥水を処理する際に処理面がきれいになっていないといけないのですが、見た目のきれいさだけでなく、コーティングの結合を遮る元素が残っていないかなどを検討する必要があり、個人ではこれをコントロールすることは難しいでしょう。

この後ご紹介するノウハウのあるプロにご相談ください。

シームテープの剥がれや生地の剥離が発生した

これは実は洗濯の問題というより、その前に問題があります。洗濯がクリティカルな問題になっているのですが、原因としては主に保管です。

クリーニングされないまま長期間、風通しの悪いスタッフバッグなどに入れっぱなしで保管していたという方もいまして、そのような保管は接着面の劣化を起こします。

ゴアテックスのメンブレン自体は化学的に大変安定した素材ですが、接着面は違います。縫い目にはシームテープと呼ばれる防水テープが貼られていますし、そもそもゴアテックスのラミネートも接着されています。そのような接着面が劣化して剥がれや剥離が引き起こされますが、基本的には保管が原因です。

撥水シミができてしまった

撥水剤をたくさん入れることで撥水がより回復するのではないか?と考えて、パッケージに記載されている量以上の撥水剤を入れてしまったり、過剰に撥水剤を吹き付けたりすることで、撥水剤シミができてしまうことがあります。
こうなると個人では対処は難しいです。このようなシミができてしまったら後に紹介するプロのクリーニングにご相談ください。

ゴアテックスウェアのプロのクリーニングとは

ゴアテックスのクリーニングは個人でもできますが、プロに任せることで、個人では到達できないレベルの品質に仕上げることができます。
プロのクリーニングと言っても、クリーニングには資格がありますが、その中でも本当にアウトドアウェアに特化してクリーニングを行っている業者はほとんど見かけたことはありません。
一般的なクリーニングを扱っているお店がゴアテックスも洗いますよというケースが多いです。

そこで今回は、本当にアウトドアしか対応していない私たちのお店のケースを紹介します。
そのため、一般的なクリーニング店とはプロセスは異なっている部分があり、どのお店も同じような内容を実施してくれるわけではありません。
あくまで私たちのお店のケースを紹介します。

アウトドア専門クリーニング:ドロップルーフとは?

私たちは元々アウトドア専門のレンタルサービスを展開しております。その中でゴアテックスウェアもたくさん保有しており、まずは自分達が持っているゴアテックスウェアをどうしたらより良い状態で貸し出しができるのだろうかという状態からスタートしました。

特に撥水性の回復は何度もレンタルで貸し出されるウェアにおいて重要な課題でした。最初は個人の方と同じようにお店で入手可能な撥水剤から試していきました。
でも、それでは満足がいかなかったのです。幸い、私は子供のころから研究開発が好きな理系の人間でしたので、自分の中の何とかしたいという気持ちが強くなり、ゴアテックスのウェアを切り刻み、色々な方法で処理を行い、研究開発するという日々を送っていました。私どもには繰り返しレンタルされて撥水性が失われたゴアテックスウェアがたくさんありましたので、結果として100着以上のゴアテックスウェアをダメにしながらの開発となりました。

そのようにして開発された撥水加工は、特殊な工程で、一般的なクリーニング店の撥水加工とは異なります。一般的な衣類に加工ができない為、アウトドア専門としている点でもあります。もちろん個人で行う撥水処理とは異なっており、結果として高い撥水性能が出せるようになっています。

プロのクリーニングは何が違う

プロのクリーニングと個人で行う洗濯との違いは、汚れの落ち方、撥水の回復性、チェック・修繕となります。それぞれについて解説していきます。

汚れの落ち方

ゴアテックス向けの洗剤はゴアテックスに悪影響が及ばないようにしている反面、洗浄力が弱まります。そのため、洗ったのにきれいにならない、汚れが落ちなかったという悩みもよく聞きます。

私たちのプロのクリーニングでは、前処理を念入りに行います。汚れが落ちずに撥水処理をすると、撥水が乗りにくいだけでなく、汚れをコーティングしてしまう可能性があるので、汚れについては念入りにチェックして、汚れが確認できた部分を下処理をしています。
下処理も染み抜きのように複数の処理がありますので、汚れに対して有効な下処理を判断していきます。

撥水の回復性

撥水の回復性はプロと個人では大きく異なります。撥水の回復性について特に意識しているのは、撥水直後の撥水性能だけでなく撥水の持続性です。

撥水処理をすぐに取れずに持続力がある形で処理するためには、特別な処理方法が必要です。家庭で行う撥水処理はあくまで家庭で特別な機材を使わずに処理ができるように開発されています。簡単な反面、それは性能を犠牲にしているという意味でもあります。このようなプロセスから個人とプロでは異なります。

また、持続力のある撥水処理を行う為にも、生地の洗浄にも工夫があります。すでに乗っている撥水加工や、撥水を妨げる成分を除去することを行います。撥水剤だけでなく、洗浄の時点から撥水性は影響されてくるという点がプロならではの工夫ではあります。

チェック&修繕

チェックも個人とプロで差が出るポイントです。私たちは汚れのチェックや破損のチェックを念入りに行い、チェックシートをお見積りの際にお客様にメールにて添付してお送りしています。そこで気が付いた修理必要箇所は修理のご提案もしております。必要に応じて修理の依頼もしていただいて大丈夫です。

なお、生地の劣化やシームテープの劣化具合も確認します。

そして最終仕上がり段階で撥水加工のチェックを行っているのは私たち独自の取り組みだと思います。撥水のチェックと言っても弾くか弾かないかというチェックだけでなく、撥水加工がどのくらい持続力を発揮できそうかどうかを確認することができるのは私たちのオリジナルの品質検査となりますので、アウトドア専門のプロならではのこだわりと言えると思います。

このような確認作業を行われて、ゴアテックスウェアのクリーニングが行われていきます。

まとめ

ゴアテックスの洗濯はこちらの生地で紹介したように自分でもできます。自分で行うにしても、撥水加工が落ちてしまうのではないか、ゴアテックスにダメージがのこらないか、失敗しないか、など自信がないような場合は私たちのようなプロのクリーニングに任せるのも良いと思います。実際に知識不足や勘違いでゴアテックスにシミが残ってしまうと個人では取ることは難しいです。そして品質も個人の設備や技術では限界があります。この記事を書いている私でも、知識があったとしても家庭では満足なゴアテックスのクリーニング&メンテナンスは正直難しいと感じています。それはプロの技術と設備を知っているからこそでもあります。

私のおすすめとしては、日常のお手入れは洗濯として行っていただき、シーズン終了後のメンテナンスとして私たちプロにクリーニングを出すのが良いかと感じております。そのような使い分けを行い、ゴアテックスウェアを永く良い状態で快適に使っていただけるよう、お役立ちできれば幸いです。

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