アウトドアギアにおけるDWR(耐久撥水)の重要性とその意味

アウトドア・ギアを選ぶとき、よく理解しておくべき用語があります: それはDWRです。

DWRとはDurable Water Repellent(耐久撥水)の略で、ジャケット、バックパック、テントなど、ギアの性能を確保する上で重要な役割を果たします。
この記事では、DWRの意味と、なぜアウトドア愛好家にとって不可欠な機能なのかを掘り下げていきます。

DWRとは、生地の表層に施される化学的な撥水加工のこと。この加工によって生地の表面張力が下がり、水が生地に染み込むのではなく、玉になって転がり落ちるようになります。
DWRの重要性は、水が生地にしみこんで断熱性を損なうのを防ぐことや重量が増すことを防ぐため、アウトドア活動中にドライで快適な状態を保つことができる点にあります。

DWRの重要性とその機能を理解することは、風雨に耐えるアウトドア・ギアを選ぶ際に、十分な情報を得た上で決断するのに役立ちます。
そこで今回は、DWR(耐久性撥水)について詳しく解説し、アウトドアでの快適性とパフォーマンスを確保するDWRの重要性をご紹介します。

DWRとは?

DWR(耐久撥水)とは、アウトドア・ギアに使用される生地の表地に施される化学処理です。
DWRの目的は生地に疎水性のバリアを作り、水が生地に浸透するのを防ぐことです。
DWR加工が施された生地に水が触れると、水滴が形成され、吸収される代わりに表面から転がり落ちます。
これはDWRコーティングによって生じる表面張力によるもので、水が塊になって滑り落ちます。

DWR加工は生地の表面をミクロのレベルで変化させることで機能します。
DWR加工に使用される化学薬品は生地の表面エネルギーを低下させ、水分子に対する吸引力を弱めます。
水分子は吸収される代わりに表面に水滴を作り、DWRコーティングによって弾かれます。

ここで重要なのは、DWRは防水性ではないということです。
DWRは優れた撥水性を発揮しますが、生地が完全に水を通さなくなるわけではありません。
使用とともに、摩耗や引き裂き、あるいは過酷な条件にさらされることにより、DWRコーティングの効果は低下する可能性があります。
しかし、定期的なメンテナンスと適切なお手入れによって、DWR加工の性能を維持することができます。

アウトドア・ギアにおけるDWRの利点

アウトドア・ギアにおけるDWRの利点は数多く、重要です。
主な利点のひとつは、アウトドア活動中に通気性を確保する役割があることです。
DWRが失われた状態では通気性が極端に少なくなってしまいます。
DWRが確保されることでゴアテックスなどの高機能素材は活かされます。
これは、体温や汗がすぐに蓄積するような激しいアクティビティでは特に重要です。
湿気を蒸発させることで、DWRは体温調節を助け、快適さを保ちます。

DWRは、体温の冷えを防いでくれます。
水は熱を伝えやすい物質の為、水分を含んだジャケットはとても体を冷えやすくしてしまいます。
そのため、DWRを確保することで、熱を逃がさないようにして、雨でも体を冷やさずに行動することができ、場合によって極寒地など厳しい環境では命を救うかもしれません。

さらに、DWRを失ったアウトドアギアは水分を含むことで重量が重くなってしまいます。
濡れたジャケットは本来の何倍もの重量になります。
それがバックパック、登山靴などそれぞれ重さを含むので、登山者はとても疲労してしまうでしょう。
DWRを保つことは、ギアの軽量化にもつながり、そして登山者の体力を守ることになります。

なお、DWRそのものの意味と同じになりますが、水を含みにくくなることで、アウトドアギアの乾燥が速くなります。
特に何日も山で過ごすようなトレイルの場合、乾燥の速さはとても重宝されるでしょう。

DWRに関するよくある誤解

DWRには多くの利点があるにもかかわらず、DWRに関するよくある誤解に対処する必要があります。

最も一般的な誤解のひとつは、DWRを施せば生地が防水性を持つというものです。
前述したように、DWRは防水性ではなく撥水性を提供します。
防水と撥水はそもそも違う物理現象となります。
たしかに軽い雨や雪には耐えることができているように見えるかもしれませんが、決して防水されているわけではありません。
単に水が生地に吸収されず水自身の表面張力により水が丸くなっているだけです。
圧力が掛かれば水は通過してしまいます。

もうひとつの誤解は、DWRは永久的な加工であるというものです。
DWRコーティングは長持ちするように設計されていますが、使用とともに摩耗することは避けられません。
摩擦や洗濯、紫外線への暴露などの要因は、DWRコーティングの劣化を早めます。

似ていますが同じようなよくある間違いが、時間が経つとDWRが低下してしまうという誤解です。
ブログ等でもそのようなことが書いてあることが多いです。
しかしこれは間違いで、DWRは私たちの寿命レベルで自然劣化することはありません。
時間と共に低下するのではなく、使用によってのみ低下します。

DWRコーティングの寿命に影響する要因

DWRコーティングの寿命にはいくつかの要因が影響します。主な要因のひとつは摩耗です。
生地とバックパックのストラップや岩などの外面との摩擦が続くと、時間の経過とともにDWRコーティングが摩耗します。
摩耗を最小限に抑え、DWR加工の効果を長持ちさせるためには、ギアの扱い方や使い方に気を配ることが重要です。

洗濯やクリーニングの方法も、DWRコーティングの寿命に影響を与えます。
洗剤残りがDWRに影響を与えるため、洗濯時のすすぎはとても重要です。
すすぎは3回行い、可能な限り洗剤残りを排除しましょう。
すすぎ性のよい洗剤を使うことも大切です。
アルカリ性が強い洗剤はすすぎ性も悪くなるので、アルカリ性が弱い洗剤で、洗剤の量にも気を配る必要があります。

洗濯によるDWR低下の要因は洗剤だけではありません。
DWRは水に馴染んでしまうという性質も持っています。
長い間水に触れることで、DWRのコーティングの中に変化が起き、水に馴染む成分が表面に出てきてしまいます。

紫外線にさらされることもDWRコーティングを劣化させます。
日光に長時間さらされると、DWR加工に使用されている化学物質が分解され、効果が低下します。
使用しないときは涼しく乾燥した場所に保管することで、紫外線によるダメージを最小限に抑え、DWR加工の寿命を延ばすことができます。

DWR加工を施したアウトドア用品の適切なお手入れとメンテナンス

DWR加工を施したアウトドア用品の寿命と性能を最大限に引き出すには、適切なお手入れとメンテナンスが不可欠です。
ここでは、DWRコーティングの効果を維持するためのヒントをご紹介します:

  1. メーカーの指示に従う: メーカーの指示に従う:クリーニングやメンテナンスについては、必ずメーカーが提供する衣類のタグを確認してください。そこにはお手入れの際に守るべき項目が記載されています。生地やギアの種類によっては、DWRコーティングを維持するために特定のクリーニング方法が必要な場合があります。
  2. 適切な洗剤を選定する: ギアを洗濯する際は、アウトドア素材専用の中性洗剤を選びましょう。洗剤に求められる性能として特に大切なのはすすぎ易さです。洗剤残りはDWRに良い影響を与えることはありません。また柔軟剤や漂白剤の使用は、DWR加工を劣化させる可能性があるため避けましょう。
  3. 熱を加える: 熱を加えることでDWRの再活性化が起こる場合があります。洗濯後の場合は必ずジャケットが乾燥してから熱を加えてください。そうしないとDWRの再活性にエネルギーが使われず、水の蒸発に熱が使われてしまいます。濡れているジャケットも同じです。ただし必ず熱を加えると再活性が得られるわけではなく、摩耗してDWRコーティングそのものが剥がれてしまっている場合には意味を成しません。
  4. DWR加工を施す:先に説明した熱を加える工程を行ってもDWRの再活性が得られない場合はDWRコーティングそのものが剥がれてしまっている可能性があります。この場合はDWRの再加工が必要となります。生地に塗布できるさまざまなDWRスプレーが市販されています。また私たちのようなDWRの再活性の専門家に依頼しても良いでしょう。私たちは特別な工程によって再活性を行う為、自分で行うよりも品質の良いDWR加工ができます。

このようなケアとメンテナンスを実践することで、DWR加工を施したアウトドア・ギアを長持ちさせ、濡れたコンディションで最適なパフォーマンスを発揮させることができます。

従来のDWRコーティングに代わるもの

近年、従来のDWRコーティングが環境に与える影響に対する懸念が高まっています。
パーフルオロ化合物(PFC)など、これらの処理に使用される化学物質の一部は、環境中に残留し、生物蓄積性があることが判明しています。
その結果、メーカーやアウトドア愛好家は、より持続可能で環境に優しい代替策を求めています。

従来のDWRコーティングに代わるもののひとつに、非フッ素系DWRトリートメントの使用があります。
これらの加工は、撥水性を保ちながら環境への害が少ない代替化学物質を使用しています。
ただし非フッ素系DWRコーティングは、撥水効果はあるものの、フッ素系ほど耐久性は高くはありません。

もうひとつの新たな解決策は、バイオベースのDWR処理剤の開発です。
これらの処理剤は、合成化学物質の代わりに、トウモロコシなどの植物由来油の再生可能な生分解性材料を使用している。
バイオベースのDWRコーティングは、撥水性を維持しながら、より持続可能な選択肢を提供します。
しかし、耐久性や過酷な条件下での性能という点では問題がありそうです。

代替DWRコーティングの開発と採用はまだ進行中であることに注意することが重要です。
技術や研究の進歩に伴い、将来的にはより持続可能な選択肢が増えることが予想されます。

DWRの環境への影響と持続可能な代替案

DWRコーティングの環境への影響は、主にパーフルオロ化合物(PFC)の存在により、大きな懸念となっています。
これらの化学物質は環境中に残留し、生物に蓄積する可能性があることがわかってきています。
PFCはまた、ある程度の摂取量になると生物に有毒であることが知られており、ヒトの様々な健康問題との関連も指摘されています。

こうした環境問題に対処するため、規制機関や業界団体は、DWR処理における特定のPFCの使用を段階的に廃止する措置を取ろうとしています。
環境と人体に害を及ぼす可能性があるため、特定のPFCの使用を禁止または制限している国もあります。

前述したように、非フッ素系およびバイオベースのDWR処理剤の開発は、従来のDWRコーティングに代わる、より持続可能な選択肢を提供するものです。
代替化学物質や再生可能素材を使用することで、これらのコーティング剤はDWR処理に伴う環境への影響を軽減します。
しかし、安全性と有効性を確保するためには、これらの代替物質の長期的な影響を監視し、研究し続けることが重要です。

耐久性に優れ、環境に優しいDWRコーティングを施したアウトドアギアを選ぶ

アウトドアギアを選ぶ際には、性能だけでなく、使用されているDWRコーティングが環境に与える影響も考慮することが重要です。以下に留意すべき要素を挙げていきます:

  1. 1.環境に優しい認証を受けているか: 公認のエコラベルや団体の認証を受けているギアを探そう。これらの認証は、そのギアが持続可能なDWRコーティングの使用を含む特定の環境基準を満たしていることを保証します。
  2. ブランドの持続可能性への取り組みを調べる: 多くのアウトドア用品ブランドは、環境フットプリントを減らすためのステップを踏んでいます。ブランドの持続可能性への取り組みや、環境に優しい素材やコーティングの使用への取り組みを調べてみましょう。
  3. 非フッ素系またはバイオベースのDWR加工を検討する: 環境維持を最優先するのであれば、非フッ素系のDWRコーティングを使用したギアを検討しましょう。これらのコーティングは耐久性という点では限界があるかもしれませんが、より持続可能な選択肢を提供してくれます。
  4. 耐久性のあるDWR加工を施したギアを探す: ブランドによっては、より耐久性の高いDWRコーティングを施したギアを提供している。これらのコーティングは、より多くの摩耗や洗濯サイクルに耐えることができ、頻繁に再塗布する必要性を減らすことができます。

これらの要素を考慮することで、より情報に基づいた選択ができ、性能と持続可能性の両方を優先するブランドをサポートすることができます。

結論 性能向上と環境責任のためにDWRを採用する

耐久性撥水加工(DWR)はアウトドア・ギアの重要な機能であり、アウトドア活動中のパフォーマンスを高め、ドライで快適な状態を保つ。生地から水をはじくことで、DWRは生地が持つ透湿性の飽和を防ぎ、保温性を維持し、通気性を高めます。
しかし、DWRは防水ではなく、長持ちさせるためには適切なケアとメンテナンスが必要であることを理解しておくことが重要です。

従来のDWRコーティングは環境問題を提起してきましたが、より持続可能な選択肢を提供するために代替ソリューションが開発されています。
非フッ素系のDWR加工は、撥水性を保ちながら環境への影響を軽減します。
アウトドアギアを選ぶ際には、DWR加工が環境に与える影響を考慮し、持続可能性を優先するブランドをサポートすることが不可欠です。

DWRを採用し、意識的な選択をすることで、環境への影響を最小限に抑えながらアウトドアを楽しむことができます。

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