DWR(durable water repellency)のよくある誤解

アウトドアジャケットに施されているDWRとはDurable water repellencyの略語でありますが、その解説にしばしば誤解が見受けられます。ここではDWRの正しい知識を解説し、より快適なアウトドアライフに繋がることを願います。

GORE-TEXの防水性が低下する

こちらは誤解です。低下するのは防水性ではなく撥水性です。防水性と撥水性の違いは水を生地に通過させないようにしているか、水を生地が吸収しないかの違いですが、実際の物理現象としては全く異なるものとなります。そのため、撥水性は生地が水を吸収しないが通過することがあるため、防水性とは異なります。

GORE-TEXの防水性能は物理的な膜が存在するため、破れなどの物理的な損傷が無ければ防水性能が低下することはありません。

一方で撥水性能は、生地表面の科学作用で水を弾くため、摩耗などの使用時のストレスにより低下します。定期的にメンテナンスやケアを行い撥水性能を回復させる必要があります。

DWRは透湿性に影響する

正しいのですが、影響するのは透湿性能だけではありません。生地が水を吸収することで体が冷えやすくなることと、ジャケットが水を溜め込んで重くなってしまうことです。

これはGORE-TEX等の防水透湿性生地の構造が関係します。GORE-TEX等の防水透湿性生地はメンブレンという膜が本体であり、その本体を保護するようにナイロン生地などでメンブレンが挟み込まれています。
それらをサンドイッチにしてラミネートしたのがGORE-TEXなどの防水透湿性生地です。表生地や裏生地は一般的な生地と変わらないため、それらの生地は撥水性が失われると透湿性が阻害されるだけでなく、水を吸収することでジャケットの重量増加や体温の低下が引き起こされます。

レインジャケットのDWRは洗濯すると取れてしまうもしくは弱まる

間違ってはいないのですが、正しい洗濯であればDWRの低下は小さいです。

確かに洗濯で全くDWRが低下しないかと言えばそれは間違いになります。しかしながら撥水剤は50回、100回の洗濯時の影響を見て選択されています。
確かに洗濯によって全くDWRが低下しないわけではないのですが、50回や100回洗濯されてもDWRが無くならないような処理をされています。

一方で、正しく洗濯がされていない場合DWRの低下は著しくなります。洗剤の選択が間違っていたり、洗剤を想定以上に使っていたり、すすぎが十分でないとDWRは早く低下します。

DWRは時間の経過と共に低下する

DWRは時間の経過で低下するのではなく、使用時のストレスによって低下します。DWRは使わなければ全く低下しません。レインジャケットは使用すると擦れ、汚れの付着、雨の馴染み等のストレスを受けます。
これらのストレスにより糸自体が切れたり脱落したり、もしくはDWRコーティングのみ剥がれたりします。そうすることでDWR性能は低下します。

熱を加えればDWRは回復する

合っている場合もありますが、正確には、熱を加えてDWRが回復する場合もあると言う方が正しいでしょう。

DWRが低下する要因として、汚れの付着、DWRの脱落、そしてDWRが水に馴染んでしまう場合の3つが主に考えられます。このうちのDWRが水に馴染んでしまった場合にのみ、熱を加えて回復する可能性があります。そのため、熱を加えても回復しない場合もあります。その場合は別の方法を試す必要があります。
汚れの付着の場合は洗濯を実施しましょう。DWRが脱落してしまっている場合は、再度DWRの処理が必要になります。DWRの再処理については次のトピックスも参考にしてみてください。

DWR処理剤はたくさんつけた方が良い

これは間違いで、処理剤の付けすぎはシミの原因になってしまいます。

DWR処理剤がたくさんつけた方が効果が長持ちするのではないかと考えるのは良くわかります。残念ながら効果が上がるわけではありません。むしろたくさんつけることで性能が下がる可能性もあります。
またシミとして残ってしまうこともあります。不具合の方が多いので、DWR処理剤は決められた量を守って使用してください。

市販のDWR処理剤と製品のDWR処理剤は同じ

これは間違いです。一般消費者が手に入れることができるDWR剤とGORE-TEX製品に施されているDWR処理剤は異なります。

これは製品に施されているDWR処理は機械処理して生地に定着させるのですが、市販のDWR剤は機械処理ができないため、家庭で処理することを前提に作られています。
特に機械が必要なく手軽に簡単に処理することはメリットです。一方でDWR性能が製品に施されているDWRのような品質にはできない点はデメリットと言えます。

もし市販のDWR処理で満足できない場合は私たちプロのDWR業者に相談してください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加