「あめんぼは、どうしてあんなに自由に水の上を走りまわれるのだろう?」
まだ小さかったころ、誰でも一度は不思議に思ったことがあるでしょう。体長わずか数センチとはいえ、体重がゼロでないことは、幼なごころにもわかっていたはずなのですから。
そんな遠い日の疑問を「表面張力」というキーワードで説明できるようになったのは、たいていの人は小学校の高学年から中学生のころでしょうか? そう、理科でおこなったあの実験。コップに水を少しずつ満たしていくと、上のへりを越えてもあふれることなく、こんもり山盛りになるという現象です。
すこしむずかしい言い方をすると、「表面自由エネルギー」ともいう「表面張力」。物理学的にいうと「液体が固体と接するとき、表面をできるだけ小さくしようとする“界面張力”の一種」なのだそう。
水のもつこのような性質を最大限に生かしているのが、あめんぼの足がもっている構造と機能があいまって発揮する「撥水性」。つまり、あめんぼの足先は、完璧といってもいいほど水をはじく能力をもっているのですね。その結果、沈むことなく水面を自在に歩いているというわけです。
あめんぼはレインギアの究極形
片や、一見すると、まったくの平面のようにも見える布地。ある程度能力の高い光学顕微鏡などを使って「ミクロの目」で見れば、繊維のケバだちがたくさん出ていて、まるであめんぼの足先と同じような構造をしているのです。
その、ケバだった繊維の一本一本に適度な撥水性をもたせれば、あめんぼの足が水の表面張力を最大限に発揮させるのと同じ現象が起きるのではないか? つまり、レインジャケットなどに雨が降りそそいでも寄せつけず、完璧にはじいてくれるのではないか?
理想的なレインギアへのヒントは、あめんぼがもっていたというわけですね。
アウトドアライフをより快適・安全に楽しむためにも、「ドロップルーフ」もまた、自然のなかから学ぶ姿勢を保ちつづけたいと思います。