数年前からアウトドアウェアでも非フッ素系撥水が施されたウェアが一般的になりました。本記事ではそのそも非フッ素系撥水とは何なのか?それらはフッ素系撥水とどう違うのか?そしてなぜそのこのような流れになったのか?などを解説していきます。
非フッ素系撥水とは
有機フッ素化合物PFASを使わない撥水の事を指します。
呼び方としては幾つかあり、PFASフリー撥水であったり、PFCフリー撥水、そしてフッ素フリー撥水とも呼ばれます。これらは大雑把に非フッ素系撥水と同じ意味として使われています。
ここで少し注意しておきたい点は、フッ素=有機フッ素化合物ではありません。有機フッ素化合物はフッ素の一部ではありますが、フッ素の全ては有機化合物ではありません。
有機フッ素化合物以外に無機フッ素化合物があり、無機フッ素化合物の身近な例が歯磨き粉に含まれるフッ素です。
有機化合物と無機化合物は同じフッ素が使われているからと言って、同じものにしてはいけません。全然別物と理解しておきましょう。
フッ素系撥水とどう違うのか?
フッ素を使うと、非常に優れた撥水性を持たせることができるので、これまで重宝されてきました。
もう少し解説すると、撥水剤としてフッ素を含有させた場合、フルオロアルキル基と呼ばれる炭素とフッ素を結合させた結合を作ることができます。
この時、この撥水剤をコーティングさせた面は、その他の元素で作る表面張力より、より低い表面張力を与えることができるために、高い撥水性能を誇ります。
フッ素を用いた撥水性能は他の元素で付与できる撥水性能の中で原理的には最高性能となるため、高い撥水性能が求められる用途にはフッ素系の撥水剤が用いられてきました。
逆に言えば、非フッ素系撥水剤を用いるということは、撥水性能が低下してしまうということです。
たとえば現状はフッ素系撥水であれば水だけではなく油も弾くことができました。
しかしながら非フッ素系撥水では油を弾くのは困難な状況です。
これにより汚れによる耐性が非常に弱くなってしまったとも言えます。
それを補うために各メーカーでは洗濯をこまめに実施しましょうというアナウンスを行うようになりました。
なぜ非フッ素系に移行する流れになっているのか?
ではなぜ、撥水性能が下がるにもかからず非フッ素に移行しているのでしょうか?
それには有機化合物PFASの環境問題と身体的な影響の可能性が背景にあります。
有機フッ素化合物は炭素とフッ素の結合を持ちますが、この結合エネルギーが非常に強固なため、環境中でとても分解されにくくなっています。
水や大気の流れで地球上に拡散されて、PFASは今となっては地球上のあらゆる場所で検出されるような状態です。
そもそも有機フッ素化合物PFASは自然環境中には存在しないため、目に見えないとは言え、PFASが環境中にバラまかれている状況は好ましくはありません。
そこで、PFASを使わないような流れが起こっています。
PFASの身体的な影響も、非フッ素化の流れに影響しています。
しかしながら注意したいのはPFASの身体的な影響について、断定的に記載されているネット記事などよく見かけますが、あくまで可能性の話であり、PFAS全てで確認できているわけではないという点を注意する必要があります。
近年、PFASの一部の物質となるPFOA、PFOSにおいて発がん性の関連性が分かってきました。
ただし、PFAS全てがPFOAやPFOSではありませんし、PFOAやPFOSにおいても摂取したら直ちに癌になるというわけでもありません。
摂取量と摂取期間を考慮する必要があり、この辺りははっきりとしない点があります。
とは言うものの、前述のようにそもそも人為的に作られたものですし、摂取するようなものではないので、PFASを無くしていきましょうという流れになっています。
非フッ素化による撥水性回復の重要性
環境面や身体的な影響の可能性から非フッ素に移行するのは、やむを得ないというか、むしろ人の手で環境を悪化させてしまったものを、人の手で環境を戻す責任があると考えています。
この時、撥水性能が悪くなってしまうことは、残念ながら避けられません。
しかしながら、性能が悪くなるから環境問題は無視してよいものではありませんので、非フッ素化を推進していく必要があります。
高機能素材が使われているレインウェアでは、非フッ素化によって、撥水性が悪くなるため、撥水性の回復作業が、高機能を維持するために重要になります。
この時に、市販の防水スプレーや撥水剤を使う方法もありますが、それを試したのに思うように撥水性が回復できない方のために、プロの撥水回復サービスを私どもは提供しています。
思うようにいかなかった人はぜひ私どもにお問い合わせください。