ゴアテックスの洗濯でのよくある失敗&トラブル事例

ゴアテックスの洗濯方法はゴアテックスのウェブサイトや各メーカーのウェブサイトで紹介されています。

紹介されている通りに洗濯を行っているはずなのに上手く行かなかったり、トラブルが発生したりする経験者が多く、私たちプロにご相談されることがあります。

今回はそんなご相談の中からよくあるゴアテックスの洗濯の失敗事例やトラブル事例を紹介します。

そして、それらの発生原因、どうすれば防ぐことができるかも併せて紹介していきます。

汚れが落ちない

ゴアテックスレインウェアの汚れ落ちに困っている方をよく見かけます。
気になるシミや首回り、袖周りの汚れが洗濯してもなかなか落ちずにご相談いただきます。

この時、NIKWAXやGrangersなどのアウトドアの専用洗剤を使用して洗濯されている方が多いのですが、ここに問題があります。

決してアウトドアの専用洗剤の使用が良くないわけではなく、それらを使って洗濯をしてほしいのですが、アウトドア専用洗剤は洗浄力に対しては比較的マイルドになっています。

その代わり一般洗剤と比べて、後ほど説明するようなアウトドア用レインウェアの致命的な損傷を防いでくれたり、すすぎ性が良く、アウトドアレインウェアに施されている耐久撥水処理、英語で表現するとDWR(durable water repellent)処理の低下を防いでくれる効果を持っています。
しかしながら汚れ落ちに関しては一般洗剤より劣ってしまうので、汚れが落ちないという問題が発生しやすいです。

対策:汚れ落ち問題を防ぐには?

前処理が大切になります。汚れが気になる部分は洗濯の前に洗剤を染み込ませて置き、繊維の汚れと馴染むように揉んでおきます。
この部分だけは一般洗剤を使っても良いでしょう、ただし洗剤の付けすぎに注意です。
ごく少量で汚れの部分だけに染み込むように使用量に注意してください。

汚れをしっかり落とさず撥水処理(DWR処理)してしまう

汚れを十分に落とさずに撥水処理を行ってしまう点も問題です。
私たちプロは最初の表面状況にとても気を使います。
撥水処理はコーティングの一種ですので、コーティング表面をきれいにしておくというのはとても重要な作業になります。

皆さんもテープを貼るときに、貼り付け面がとても汚れている状態でテープを貼りつけないですよね。
生地の表面状態は撥水処理の品質にとても影響する部分なのです。

また、十分な洗濯がされないままに撥水処理を行うと汚れの定着を促してしまいます。
撥水処理はコーティング加工ですので、汚れが残ったままですとその汚れを保護するような役割を果たしてしまいます。
洗濯だけでは汚れがより一層落ちにくくなるデメリットに繋がってしまいます。

対策:しっかり汚れが落としてから撥水処理(DWR処理)する

しっかりと汚れを落としてから撥水処理をすることが基本になりますが、長期間蓄積された汚れは定着してしまい、洗濯だけでは落ちなくなっている場合があります。
このような状況を防ぐためにも定期的に洗濯をすることも大切です。
目に見えて汚れてから洗濯をするのではなく、目に見えない皮脂汚れはレインウェアの裏側に溜まっています。
定期的な洗濯を行い、汚れの強い定着を防ぐことになります。

撥水剤を使用したのに撥水が効かない・

撥水性能が落ちてきたので、洗濯をして撥水処理を行ったのに、思ったほど回復しなかった。またすぐに濡れる状態に戻ってしまったという声はよく聞きます。

この問題は幾つかの問題が考えられるため大変複雑です。
なぜならこのために私たちはプロとして仕事を担っているからです。

幾つか簡単に原因を上げておきます。

1,洗剤の洗濯ミス

洗剤はその後の撥水性能に影響を与えます。
どれを使ったらよいか分からない人はアウトドア用の洗剤を使用するのが最も望ましいです。

2,洗剤のすすぎ不足

洗剤の残りもその後の撥水処理に影響を与えます。
洗剤は十分に濯いでも結構残ってしまうものです。
アウトドアの専用洗剤はすすぎ性も良くなっているので、このような意味でもアウトドア専用洗剤を使うことが好ましいです。

3,香水、消臭剤の影響

 普段から香水や消臭剤、もしくは普段から防水スプレーを使用している場合などでこれらの影響が出てくる場合があります。

4,撥水剤のミスマッチ

 市販されている撥水剤はあくまで簡易撥水処理であることに注意しなければなりません。
家庭で失敗せずに処理ができるように開発されている商品であり、その分性能が犠牲になっています。
撥水性能が満足できない場合、そもそも選んでいる商品の達成できる性能レベルでは満足することが難しいことがあります。

対策:撥水性能に満足できない場合は

先に説明したように撥水性能に満足できない場合、その理由は複雑です。
このため、一般の方にとっては、たまたま上手く行く事もあれば上手く行かないこともあるという状況に陥るでしょう。
いつもは上手く行っていたのにこのレインウェアは撥水処理が上手く行かないそんなことが起こりうるのです。

そんな時は私たちプロの撥水処理専門店に任せてください。たくさんのノウハウがあり、多くの前処理を行った後の撥水処理のためのより良い状態を作ることが私たちはできます。
そして、撥水処理のプロセス自体も一般の処理剤とは異なります。
私たちは第一に撥水性能を出すためにプロセスを作ってきました。
そのため、撥水剤だけを販売して家庭で処理するというビジネスを行っていません。
より性能を求めるには、プロセスも専用の加工方法を行い、達成することができます。
これがプロと一般の違いになります。

撥水剤のシミができてしまう

ご自身で撥水処理した際に撥水剤のシミができてしまったというのもよくある相談です。
この原因はシンプルで、撥水剤を既定以上の使用をしてしまったことにより起こります。
撥水剤をたくさん使えば使うほど性能が高くなると感じてしまうのはとてもよくわかります。
しかし、その結果起こるのは撥水シミであって、撥水性能は残念ながら高くなりません。
撥水剤の量が増えているだけで質が改善されていないので、たくさん使っても撥水シミの事故が発生しやすくなるだけです。

対策:撥水シミを起こらないようにするには

非常にシンプルで、パッケージに記載されている使用量を守ることです。
先に記載したようにたくさん使えば撥水性能が高くなるという考えを捨てて、既定の使用量を守るようにしましょう。

シミができてしまった場合に、一般の方々がこれを除去するのは難しいです。
私たちプロの技術で除去する必要があるため、相談してください。

シームテープが剥がれてしまった

ゴアテックスのジャケットには縫い目の防水性能を維持するために、縫い目部分にシームテープを貼り付けています。
これは接着であるために、接着力は経年劣化していずれ剥がれてしまいます。
経年的に接着力は弱くなるため、洗濯を行うと剥がれる可能性が出てしまうのはある意味仕方ないことなのですが、剥がれてしまった場合には再度シームテープの張替えが必要になります。

対策:シームテープの剥がれを起こさないためには

シームテープの剥がれは経年劣化ですが、この経年劣化を加速させる要因が保管状態です。
保管している場所が高温で湿気がありかつ空気の循環があまりないような状況だとシームテープの劣化は加速します。
山で使って以来、持っていくためのスタッフバッグに入れっぱなしと言う状況は最悪です。
使用後はスタッフバックから出し、ハンガー掛けしましょう。

なお、剥がれてしまったシームテープは私たちのようなメンテナンス&リペアのプロが張替え可能ですので相談してみてください。
この時、シームテープの貼り付け専用機械を持っているかどうか確認するようにしましょう。
アイロンで貼り付けるのは貼り付け圧力が不足し、品質も安定しません。
シームテープ貼り付け機械は高い温度と圧力を同時に掛けて貼り付けることができるため高い信頼性が出せます。

生地が剥離してしまった

ゴアテックス生地は実は3層になっており、表と裏は一般的なナイロンやポリエステル生地で、それに挟み込まれるようにして、ゴアテックスの本体となるメンブレンがあります。
ラミネートのように生地と生地で挟み込んで接着しているため、先に説明したシームテープのように経年的に劣化していきます。

対策:生地の剥離を起こさないためには

シームテープと同じように保管状況でその劣化は加速するので、保管状況に注意を払う必要があります。
シームテープはジャケットの形に縫製された商品に貼り付けていくため、人力で行っていきますが、ゴアテックスの生地をラミネートで貼り付けるのは専用の機械があり、安定的に処理ができる点が特徴です。
そのため、シームテープの剥がれより、生地の剥離の方が起こりにくいのが一般的です。

生地が剥離してしまった場合、残念ながら私たちプロでも修復は難しいです。
現在私どもは最高峰のアウトドアメンテナンス技術を目指し、この問題解決に対して技術開発を行っております。

まとめ

ゴアテックスを洗濯した際に発生するトラブルはほとんどが上記のパターンで起こります。これらの原因を知ることでよりよい洗濯が行えるようになるでしょう。そしてその洗濯で問題が発生した場合は私たちプロフェッショナルに相談してください。

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