高性能を持つゴアテックスですが、お手入れをしないとその性能が活かせないことを前回動画でその構造と共に説明しました。そしてお手入れとして日常的なお手入れと不定期に行うメンテナンスに分けて考える方法も提唱しました。
今回の記事はゴアテックスの日常的なお手入れとして、ゴアテックスの洗濯方法を詳しく解説していきます。
ゴアテックスは洗濯をしないほうがいいという誤解
以前、アウトドア用品のレンタル業を行っている会社さんとお話をした時、自分たちは洗濯をしないのだと言っていました。何故かと聞くと、その方が撥水性が維持できるからということでした。そして3年経ってもまだ撥水性を維持していると言っていました。
これには2つの誤解があります。
まずはゴアテックスが洗濯によって撥水性能が低下するという点、そして撥水性能が低下しないことがゴアテックスの性能を維持できることだと思っている点です。
ゴアテックスが洗濯によって撥水性能が低下するという点
これは100%間違いとは言えません。確かに洗濯をすることによって幾らかは撥水性能の低下は見られます。しかし試験で確認すると、正しい洗濯を行えば洗濯による撥水性能は大きくありません。間違った洗濯をしてしまうと撥水性の低下は大きくなってしまいます。そのため、後ほど、正しい洗濯方法、注意しなければならない点を解説します。
アウトドアのメーカー側も数十回の洗濯を行ったとしても撥水性能を維持できることを確認して販売されています。洗濯によって撥水が低下する割合と言うのはそれほど大きくはなく、それよりも実使用時のストレス、特に摩耗によるストレスで低下してしまうことが問題で、撥水コーティングが取れてしまうと、洗濯しても、熱を掛けても撥水性能は戻らなくなってしまうので、再度撥水処理が必要になります。
撥水性が低下しないことがゴアテックスの性能を維持できる
撥水性能を維持する事はゴアテックスの性能を発揮するための必要条件です。しかしながら撥水性能さえ維持できていれば問題ないわけではありません。前回動画でゴアテックスの構造について説明しておりますが、ゴアテックスに重ねられる生地のコンディションによってゴアテックスの透湿性は左右されてしまう為、生地に汚れが溜まってしまっている場合、ゴアテックスのメンブレンが問題なくても透湿性は阻害されます。これは特に内側、つまり体側の汚れにも顕著に言えまして、皮脂の汚れの堆積も溜まってしまうことで透湿性の阻害に繋がってしまいます。
このように透湿性の阻害は汚れの蓄積によっても起こりますので、定期的に洗濯を行い、ウェア内部の皮脂汚れやウェア外部の汚れを除去することが必要です。
ゴアテックスウェアの洗濯方法
ゴアテックスウェアの洗濯については、通常の衣類と同じく洗濯機で洗うことができますが、注意が必要な点があります。下記の点に注意しながら洗濯を行いましょう。
1) 洗剤選び
洗剤選びから重要です。一般洗剤でも洗えないことは無いのですが、一般洗剤には柔軟性などを維持するために、繊維に余分な成分を残すものがあるので注意が必要です。ゴアテックスの洗剤に最も求められるのは、すすぎ性です。すすいだ後にできる限り洗剤成分が残らないようにすることが大切です。
そのため、洗剤についてはNIKWAXやGrangersなど撥水剤メーカーが発売しているアウトドアウェア専用の洗剤を使いましょう。
2) 洗剤の量
アウトドアウェア専用洗剤は洗浄力はマイルドになっているものが多く、なかなか汚れが落ちにくいため、たくさん洗剤を使いたくなります。しかしながらすすぎ性を維持するためにも洗剤の使い過ぎは注意してください。
汚れが溜まりやすい、ウェア内部の首回りや腕周りはあらかじめ洗剤を染み込ませておき、軽く洗剤を揉みこませた後洗濯をすることで、汚れが落ちやすくなります。
3) ファスナーを閉める&ネットに入れる
ウェアをネットに入れるか、もしくはウェアを裏返して洗濯することで、ファスナー等の部品の破損を防ぐことができます。またウェアのポケットのファスナーは完全閉めるようにしましょう。ポケットに水が溜まって洗濯機やウェアへの過大な負荷が掛かるのを防止しましょう。
4) 洗濯コース(すすぎ多め、脱水なし)
洗濯コースは通常コースで問題ありません。すすぎは2回もしくは3回が設定できれば3回実施しましょう。しっかりと洗剤成分を濯ぐことが大切です。そして洗濯の最後の脱水は行わないようにしましょう。こちらも洗濯機やウェアへの過大な負荷が掛かるのを防ぐことが目的です。
5) 乾燥
すすぎが終わった後、洗濯機からウェアを取り出します。脱水が無いため、ウェアは非常にぬれているので、洗濯機内部で軽く水気を絞り、水気がなくなったらウェアを取り出しましょう。
その後、陰干しを行います。完全に水気がなくなるまで風通しの良い場所で干してください。
6) 熱処理
ウェアが完全に乾いたら、最後に熱処理を行います。乾燥機に20分ほど入れてウェア全体に熱を与えます。こうすることで生地表面のコーティングが活性化されて撥水性能が回復します。
以上が日常的なケアに行っていただきたいケアになります。
少しでも使ったら洗濯ということで無くて大丈夫ですが、例えば登山で終始レインウェアを着ていた後やある程度レインウェアを使った後は洗濯を行ってください。この辺りは通常のジャケットと同じ感覚と思っていただいて大丈夫です。
一方、上記の5まで行ったにもかかわらず、撥水性能が回復しない場合があります。ウェアを使用していく中で、擦れや摩耗などで撥水コーティングが取れてしまうことがあります。この場合は熱処理を行っても撥水性能は回復しません。撥水性能が無くなってしまっていたら再撥水処理が必要です。
再撥水処理のタイミング
再撥水が必要なタイミングは、レインウェアの使用状況に寄ります。撥水コーテイングは使用しない場合時間と共に低下するものではないため、各人の使用状況で再撥水のタイミングは異なりますが、シーズンに1回を目安に行うのが良いでしょう。
次回は、不定期のメンテナンスとして再撥水処理を解説します。