DWRに関する7つの誤解 – アウトドア愛好家が知っておくべきこと

こんにちは、今日は多くの方が勘違いしているDWR(撥水加工)についてお話しします。

アウトドア愛好家なら誰もが知っているGORE-TEXなどの高機能ウェアですが、その性能を左右するDWR(Durable Water Repellency)についての誤解が非常に多いんです。私たちのショップにも「ジャケットが濡れやすくなった」「防水性が落ちた気がする」といった相談がよく寄せられます。

実は、そのほとんどが撥水性に関する誤解から来ています。今回は私の20年以上のアウトドアギア販売経験から、よくある7つの誤解について解説します。

誤解その1:「GORE-TEXの防水性が低下する」

これは完全な誤解です!

低下するのは「防水性」ではなく「撥水性」です。この二つは全く異なる性質なんですよ。

防水性:水を生地に通過させない性能
撥水性:水を生地が吸収しない性能

GORE-TEXの防水性能は、内部の特殊な膜(メンブレン)によるものです。この膜が物理的に破れない限り、防水性能が低下することはありません。

一方、撥水性能は生地表面の化学作用で水を弾くもので、使用による摩耗などで徐々に低下します。これが「濡れやすくなった」と感じる原因です。

誤解その2:「DWRは透湿性だけに影響する」

正しいようで不十分な理解です。

DWRが低下すると、確かに透湿性は悪くなりますが、他にも大きな問題が2つあります:

  1. 生地が水を吸収して体が冷えやすくなる
  2. ジャケットが水を含んで重くなる

GORE-TEXなどの防水透湿素材は「サンドイッチ構造」になっています。防水透湿膜(メンブレン)を表地と裏地で挟んでいるんです。表地の撥水性が失われると、その生地は普通の布と同じように水を吸ってしまいます。

これにより、ジャケットが重くなるだけでなく、体温を奪われて寒く感じるようになります。雨の日のハイキングで急に寒くなった経験、ありませんか?それはDWRの低下が原因かもしれません。

誤解その3:「レインジャケットのDWRは洗濯すると取れてしまう」

半分正解、半分誤解です。

確かに洗濯によってDWRは少しずつ弱まりますが、正しい洗濯方法であれば、その低下は思ったより小さいんです。

実は高品質なアウトドアウェアのDWRは、50回〜100回の洗濯後もある程度の性能を維持できるように設計されています!

問題は「正しくない洗濯方法」です:

  • 強力な洗剤の使用
  • 洗剤の使いすぎ
  • すすぎ不足

これらが撥水性能を急速に低下させる原因になります。我が家では柔軟剤は絶対に使わず、専用の洗剤で優しく洗っています。

誤解その4:「DWRは時間の経過と共に低下する」

これも誤解です!

DWRは単に「時間が経った」だけでは低下しません。実際に使用した際の様々なストレスによって低下するのです:

  • 衣類同士の摩擦
  • ザックとの擦れ
  • 汚れの付着
  • 雨による負荷

つまり、クローゼットに1年間しまっておいた新品のジャケットは、ほぼ新品と同じ撥水性能を保っているはずなんです。一方、週末ごとに使っているジャケットは、使用頻度に応じて撥水性が低下します。

誤解その5:「熱を加えればDWRは回復する」

部分的に正しいです。

DWRが低下する主な要因は3つあります:

  1. 汚れの付着
  2. DWRコーティングの脱落
  3. DWRが水に「馴染んで」しまった状態

このうち、3番目の「水に馴染んだ状態」の場合のみ、熱処理で回復する可能性があります。去年までバッチリだったジャケットが今シーズン急に撥水しなくなった場合は、一度試してみる価値ありです!

具体的には、乾燥機の低温設定で10〜15分間乾燥させるか、アイロンを当て布越しに低温でかけてみてください。

ただし、他の原因の場合は熱処理だけでは回復しません:

  • 汚れが原因なら → 適切な洗濯が必要
  • DWRが脱落してしまっている → 再処理が必要

誤解その6:「DWR処理剤はたくさんつけた方が良い」

これは完全な間違いです!

「たくさん塗れば長持ちする」と考えたくなりますが、実際は逆効果になることがあります:

  • 性能が低下する可能性
  • シミになることがある
  • ムラができやすくなる

市販のDWR処理剤は、必ず推奨量を守って使用しましょう。我々プロでさえ「少なすぎず、多すぎず」の塩梅が大切だと考えています。

誤解その7:「市販のDWR処理剤と製品のDWR処理剤は同じ」

残念ながら、これも誤解です。

工場で施されるDWR処理と、私たちが家庭で行うDWR処理は全く異なります:

工場での処理

  • 専用の機械を使用
  • 高温・高圧処理で繊維に深く浸透
  • 均一に処理される

家庭での処理

  • スプレーや浸け置きタイプ
  • 機械処理なしで簡単に使える
  • 完全に均一な処理は難しい

家庭用のDWR処理剤は手軽さが最大のメリットですが、工場処理と同等の性能を期待するのは難しいでしょう。

まとめ

DWRはアウトドアギアの快適性を左右する重要な要素です。正しい知識を持って適切なケアを行えば、長くその性能を維持できます。

普段のお手入れのコツは:

  1. 適切な洗剤で優しく洗う
  2. すすぎはしっかりと
  3. 必要に応じて熱処理
  4. 汚れたまま放置しない

もし撥水性の回復でお困りなら、当店でも専門的なDWR再処理サービスを行っています。お気軽にご相談ください!

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