よくある誤解に関して【レインウェアの撥水と防水の違い】

弊社ドロップルーフサービスにおいて「防水加工をお願いします」と言われる方が非常に多いのでコラムでも触れておりますが改めて撥水と防水の違いに関して記載させて頂きます。

 

撥水加工と防水加工の違い

撥水加工は水を弾く加工です。後述する防水加工とは似ているのですが違う性質です。水を弾けば水が通らないはずなので防水と同義では無いかと疑問にもたれる事があるかもしれません。確かに100%水を弾くことが出来ていれば水を通すことが無く防水と言えるかもしれません。しかし繊維製品に行う撥水加工において恒久的に100%水を弾くことはできません。長い期間水と接触することで水を弾く力が弱くなったり、高圧洗浄機のように水圧を掛けて水を当てた場合は短時間であっても水を100%弾くことは困難です。

それでは100%で弾くことが出来なかった水はどうなるかと言いますと、基本的には繊維を通過しようとします。繊維を通過する際に後述する防水加工が無ければ、そのままレインウェア内部の衣類が濡れてしまうことになります。

つまり撥水加工はごく限定的な条件でのみ防水していると言った方が良いかもしれません。撥水加工のみで実用レベルでレインウェアとして耐えうる撥水加工はできないため、基本的には撥水加工を行うことで防水されているとは言わないのです。

 

防水加工はレインウェアの必須要素

防水加工は水を通さなくする加工です。前述した撥水加工とは似ているのですが違う性質です。水を通さない膜を張ることが一般的で、防水加工が施されていることで雨などで長時間水に触れている場合や強い雨が降ってきた場合でもレインウェアの内部に水を通しません。

防水加工は後加工で行うことができません。絶対不可能ということではありませんが、実用レベルでは不可能と言えるでしょう。製品を作る段階でこそ行うことができる加工であり、例えば繊維の裏や内部に防水膜を張ったり、縫い目部分にテープを貼ることで圧力がかかる水でもレインウェアの内部に侵入しないようにしています。

 

撥水加工はレインウェアのパフォーマンスを上げる要素

前述する防水加工があればレインウェアとしての役割を果たしているのですが、では撥水加工はどのような役割を果たしているかを説明していきます。

撥水加工がされていないウェアは水こそ通さないものの、ウェアが水を吸収してしまいます。つまりレインウェアの内部は濡れていないがレインウェアの外側が濡れてしまいます。レインウェアの外側が濡れることで、レインウェアの重量が重たくなってしまう、レインウェアが水を介して身体を冷えやすくしてしまうといったデメリットが生まれます。もしレインウェアがゴアテックスのような透湿素材であれば透湿性の阻害要因にもなります。つまり、よりレインウェアを快適なものに維持するために撥水加工が活躍しています。レインウェアのパフォーマンスを最大限発揮するためには良好な撥水加工が欠かせません。

 

撥水加工は永久なものではない

実は防水加工も撥水加工も永久的な物ではありません。防水加工においては生地に穴が空いてしまえば水が通過しますので防水機能を保てなくなります。それ以外に、例えばテントで多い事例として防水膜が化学分解してしまうこともあります。また縫い目の防水性を保持するテープもある程度年数が経つことで化学分解してしまう場合があります。これら防水加工においての劣化は、保管状態や使用状況にもよりますが数年レベルで低下していくと考えても良いでしょう。防水加工が劣化した際にはリペアが必要になります。

撥水加工も劣化や低下現象があります。防水加工よりももっと短い時間で進行します。防水加工と違って経年的に劣化していくというよりは使用することによる表面の擦れや汚れ、洗濯での生地の擦れ等によって進行します。そのためある程度使用したレインウェアは再度撥水加工を行い、撥水性を保つ必要があります。これはどんなに高いウェアであっても同じで、撥水加工を行わないウェアは水を弾くどころか水を吸収するウェアになってしまいます。撥水性を良好に保つには1年に一回とか1シーズンに一回とか使用レベルに応じて撥水再加工のメンテナンスを行う必要があります。一方で経年的に劣化するわけでは無いため全く使用せずに乾燥したクローゼットに擦れが生じないように置いてある場合には劣化することはありません(但し汚れたままの状態でクローゼットにしまった場合は汚れの定着化が起こることで撥水性が悪くなることがあります)。

 

まとめ

防水加工と撥水加工を混同している方が多いので、ぜひこの生地を一読して頂き、防水加工と撥水加工の違いを理解して頂きご依頼頂けましたら幸いでございます。

UPDATE2018.05.19
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